Child’s play

The Guardianの2005年5月、The Futuristリリース時の記事

彼は、ドラッグや銃、刑務所については語らない。しかし、ロバート・ダウニー・Jrは、クラシック・ロックとセサミ・ストリートが彼の音楽的個性を形成するのに役立ったことを喜んで話してくれた。

ロバート・ダウニーJrに会う前に、ドラッグ、銃、刑務所について話すと、その部屋からすぐに追い出されることを告げられる。また、ダウニーのアシスタントが彼の写真をすべて見て、お世辞にも美しいとは言えない写真はすべて破棄すると言われている。このような要求は、ハリウッドでのキャリアに、ドラッグ、銃、刑務所など様々な有名事件が散見される問題児であるこの俳優を、むしろ自己中心的に思わせる(彼はかつて、あまりに消耗しすぎて他人の家を自分の家と勘違いし、子供の寝室で寝たことがある)。デビュー・アルバム”The Futurist”に収録されたダウニーの過剰なまでのポートレートは、ソウルフルな表情、芸術的な表情、悲劇的な表情などさまざまで、それをさらに強化するものとなっているのだ。

本番では、ダウニーは警戒心が強く、ぎこちないものの、それなりにフレンドリーである。
ロンドンのホテルにある本が並んだ広い部屋で、2人のアシスタントと1人のメイクアップ・ウーマンに付き添われている。オレンジ色のトラックスーツに野球帽をかぶり、ソファに横たわった彼は、裕福な家の先祖代々の家に戻ってきた、気難しい道楽息子のように見える。

「確かに単純な取引ではないよ。言ってることが分かるだろ?」。ビリー・ジョエル、エルトン・ジョン、ジョニ・ミッチェルといったシンガーソングライターの70年代のレコードを思わせる、ジャジーな色合いとオーケストラの華やかさを持つこのアルバムについて、ダウニーはこう語っている。ダウニーは10曲中8曲を書き、彼の歌とピアノ演奏は確かで洗練されているのだ。
「このアルバムは、20代前半からずっと脅かしてきたことなんだけど、みんなは『なぜ今なんだ』と言うんだ。ベトナムにいる子供に『軍隊に入ったんだろ?なぜ今なんだ?徴兵されたからだよ、バカヤロー!』って尋ねる感じさ」。アシスタントの一人が緊張した面持ちで笑うと、ダウニーは「別にアルバムのレコーディングを、ベトナム戦争に参加するのと同じだと思ってるわけじゃないんだけど…」と、あきらめ気味に付け加えた。
この比較は、本人が思っている以上に適切なのかもしれない。ダウニーは友人のスタジオで”The Futurist”を制作したが、「シンガーソングライター志望のタレントがトラックを叩いている」というイメージをそこで働くエンジニアから持たれていることを自覚していた。「彼らからの恨み節も感じられた。でも、レコードが完成する頃には、もう夜中に電話する理由がなくなって、彼らも喜んでいたと思うよ」。

彼が「本業」と呼ぶものを諦めようとしないのは、アルバム制作がもたらす癒しの効果に対する彼の姿勢を考えれば、当然のことだろう。「自分の能力について持っている信念を払拭しようと決めたら、人間の精神は止められないんだ」と彼は言う。 「悪夢のような女と一緒にいて、ついに別れる勇気が湧いてくるようなものだ。そして、自分の人生から他のろくでなしを全部追い出してしまう。絶好調なんど。分かる?」。

ダウニーの父親はアングラ映画作家で、彼が6歳のとき、ローリング・ストーンズの『レット・イット・ブリード』を聴かせた。それは、彼に初めてマリファナを与える2年前で、旧友たちが自殺していくフランスのカルト映画”La Grand Bouffe”(最後の晩餐)を観に連れて行ったころの話だ。「アルバムのジャケット(デリア・スミスが作ったケーキの写真)をじっと見て、不思議な感じだなあと思いながら、この音楽は天使のような質感を持っていると思ったことを覚えているんだ」と彼は言う。
「このアルバムのアレンジャーであるジャック・ニッツェは僕の父と知り合いで、ジェファーソン・エアプレイン、ジャニス・ジョプリン、アート・ペッパー、チャーリー・ミンガス、アーティー・ショーと一緒に『レット・イット・ブリード』をリピートすることになったんだ。どれも僕に多大な影響を与えたけど、僕は6歳だ。だから、他に何に夢中になっているかって?」。彼は、子供向けテレビ番組『セサミストリート』の話をし始めた。

35年たった今でも、ダウニーの好みは変わっていない。クラシックロック、ジャズ、そしてセサミストリートのレパートリーが好きなのだ。例えば、シンガーソングライターのハリー・ニルソンのコンセプトアルバム”The Point”では、一人の孤独な少年を除いて、誰もがとがった頭を持っている場所について歌っているように、彼は子供と大人の世界がぶつかり合う瞬間が特に好きなのだ。「彼はあのアルバムを子供向けのレコードとして作ったわけではないけど、”The Fabulous Furry Freak Brothers”のようなアニメに似ていた」とダウニーはタバコをくわえたグラベル調で言う。「子供の頃、父の映画撮影現場では、ジャック・ニコルソンやジョン・カサヴェテスといった人々が、カウンターカルチャーのコミックを読みながら、8トラックでニルソンを聴きながら転がっていたんだ。10代でロサンゼルスに来た時、みんながビーチボーイズやヴァン・ヘイレンをかけていて、カルチャーショックを受けたんだ」。
ダウニーは、キングス・オブ・レオンに憧れている。「今、オリジナルなものが出てくると、みんな唖然とするんだ 」と。
「でも、もしキングス・オブ・レオンが25年前に出てきたら、他のいくつかの偉大なバンドと競争していただろう。それは、僕がいまだに映画の仕事を大量に受けている理由と似ていて、a)かなり上手い、b)クソみたいな沼だらけの時代に出てきたということなんだ」。彼のアシスタントがダウニーにまた意味深な視線を送る。「同業者の悪口を言うわけではないけど….言いたいことは分かるだろ?」。

知っておきたいこと
初めて買ったレコード:フィル・コリンズの”No Jacket Required”(日本版タイトル『フィル・コリンズIII』)

好きな映画:”La Grande Bouffe”(邦題『最後の晩餐』)

緊急時に聴きたいレコード:エルヴィス・コステロの”Imperial Bedroom”

インスピレーション:着信音
最近の発見:Sparklehorse

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